第2次AIブームを代表するAI技術。
エキスパートシステムは、ルールベース型AIであるといえる。
専門家(エキスパート)から聞き取った知識を大量にコンピュータに蓄積する。
質問を受けると、コンピュータは知識データベースから答えを抽出し、人間の専門家のように返答する。
1970年代に人工知能の研究者によって開発され、1980年代にわたって商業的に適用された。
1980年代のアメリカでは、大企業の3分の2が何らかの形でエキスパートシステムを導入していた。
日本でもこの時期、政府による「第五世代コンピュータ」という大型プロジェクトがあった。
エキスパートシステムにおける野心的なプロジェクトに「Cyc(サイク)プロジェクト」がある。

しかしエキスパートシステムが的確な判断を下すには、あらゆる専門知識を教え込まなければならず、相当のコストがかかることがわかった。
専門家にヒアリングし、知識だけを取り出すのも大変だった。
また数多くのルールが存在する場合、互いに矛盾が発生し一貫性を保てなくなってしまった
知識を管理するために、世界のすべてのルールを教え込むことは不可能である。
エキスパートシステムを使ううちに、例外や矛盾にぶつかることが増え、最終的にはシステムが矛盾に対処できずにフリーズしてしまうこともあった。
エキスパートシステムは、例外があまり生じない単純なタスクにしか対応できないものとなり、第2次AIブームは終わった。

専門性の高い知識を蓄えた賢そうなシステムでも、それを利用する人間が日常的に使う言葉の中に潜む曖昧性を汲み取れず、「常識」を持っていない。
AIの知識獲得に関するこの問題は、知識獲得のボトルネックと呼ばれる。



<代表的なエキスパートシステム>
DENDRAL(デンドラル)
有機化合物の分子構造を推定するプログラム

MYCIN(マイシン)
感染症の専門医の代わりに伝染性の血液疾患を持つ患者を診断し、抗生物質を処方する投薬決定システム。
診断精度は70%程度で、専門医の精度(80%)よりは低いが、専門ではない医師よりは高かった。

●PIP 腎臓の病気の診断支援システム
●CASNET 緑内障の診断システム